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海を渡った明治の女性-クリスチャンドクターの誕生とその軌跡-

2,200円(本体2,000円、税200円)

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【序文 全文】
大学の講義で明治四年に欧米の視察に出かけた岩倉使節団の記録である。『米欧回覧実記』を読んでいる。この使節団に加わったおよそ六十人の留学生のうち五人が日本で最初の女子留学生であり、その中に七歳の誕生日を目前にした最年少の津田梅子がいたのは有名である。
しかし本書で描かれているアメリカに渡り医学を修めた四人の日本人女性については知らなかった。この勇気ある女性たちを生んだものは何か。共通するのは、横浜・ミッションスクール・英語・旧佐募派下級士族そしてアメリカという要素だと思う。明治という時代にプロテスタントの信仰がいかに大きな影響を与えたかは、内村鑑三や新渡戸稲造らを見ればよくわかる。その信仰は当時の若い日本人を鼓舞したが、女性宣教師という存在の大きさを、この本から学ぶことができた。もうひとつ重要なのは医療であるが、これこそはキリスト教の奉仕の精神に深く結びつく。慈愛なきところに本来の医学はない。いくつもの大切な美しい糸で織りあげられた一冊であり、明治女性の天稟がここに光っている。
関東学院大学教授 富岡 幸一郎

◆もくじ◆
序 富岡幸一郎
はじめに

第1章 女医たちの背景-ミッションスクールとプロテスタント-
1.明治初期の女子教育
(1)ミッションスクールの登場
(2)ミッションスクールの女子教育-共立女学校とピアソン校長-
2.明治初期のプロテスタント
(1)新たな宣教モデル-独身女性宣教師の派遣-
(2)宣教医

第2章 岡見京とツルー
1.宣教師ツルー
(1)「東洋のメアリ・ライオン」と呼ばれて
(2)盟友リディア・E・(ベントン)バラ
(3)女たちの約束
2.岡見京の生涯と医療活動
(1)渡米までの道のり
(2)ペンシルバニア女子医科大学
(3)慈恵医院と衛生園の活動
(4)祈りの生活へ

第3章 菱川ヤスとカミングス
1.宣教医カミングス
(1)初の初老派宣教医として
(2)金沢での医療宣教
(3)ヤスとの出会い
2.菱川ヤスの生涯と医療活動
(1)金沢への旅立ち
(2)シカゴ女子医科大学
(3)カミングスを慕いて-京都「好生堂」の活動-

第4章 須藤カク、阿部ハナとケルシー
1.宣教医ケルシー
(1)マウント・ホリヨークの申し子
(2)校医ケルシーの活動
(3)助手を育てる
2.須藤カク、阿部ハナの生涯と医療活動
(1)2人の若き助手たち
(2)ローラ・メモリアル女子医科大学
(3)横浜夫人慈善病院
(4)再びアメリカへ

第5章 4人が目指した医療
1.慈善医療について
(1)宣教師会議
(2)医療福祉の源流として
(3)実践的慈愛
2.根岸の丘の医療活動

終章 女医を生きる-ウーマンフッドを超えて-

あとがき

著者:遠藤 俊子(えんどう としこ)
1953年、横浜生まれ。
日本社会事業大学社会福祉学部卒。
日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程、満期退学。
特別支援学校、看護学校講師、女性相談員等の勤務を経て、現代女性が抱える様々な問題に興味関心が深まる。現在は、主に明治期の女性史や女子(職業)教育史について、プロテスタント宣教師の視点から調査研究を行っている。

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